そうだった。

まだお前がいたんだったな…。

まだ仔犬だった頃に鬼島自身が拾ってきたゴロウ。

ただの捨て犬を自衛隊隊舎で飼えない事がわかると、鬼島はゴロウを必死で災害救助犬として育てた。

分隊の仲間としてなら一緒にいられる。

一度拾ったゴロウを人間の都合でもう一度捨てるなど、鬼島には出来なかったのだ。

「大丈夫だ」

大きな手でゴロウの頭を撫でる。

俺はまだ戦える。

生きる事を諦めた訳じゃない。

任務に殉じた部下達の分も、俺は生還しなければな…。