あの日……

バイトから帰ってきたら、拓哉の荷物など何も残っていなかった。

部屋の全てを荒らして、拓哉の物を探したが、残っていたのはたった1枚のCDだけ。


あたしは、泣くことなど忘れていたのか一人部屋で笑っていた。


二人で撮った数々の写真も、拓哉の方だけ切り取られていて、拓哉と一緒に過ごしてきた思い出のものなども一切消えていて。


それはまるで、今までの幸せすぎた日々が夢かのようだった。


どれくらい時間が経っていたのかなんて分からないが、真っ暗な部屋であたしの携帯が音を奏で始めていた。


その音楽で、誰だかわかってしまう


それは、昨日まで一緒にいた愛しい人の着信を知らせる着メロだ。


だけど、無事だったんだと安心する反面


本当にこれでさよならかと思うとなかなか通話ボタンを押せずにいた。


どれ位鳴り続けているのだろう。


もしかしたら、何らかの事情がたって出ていかなくちゃ行けなかったのかもしれない。


少しだけ残る期待があたしの中で勝ち、あたしは通話ボタンを力をこめ、それと同時に大きく深呼吸をした。