~拓哉~


***



店長に拾われたあの日

あたしの最愛の人はあたしの傍から消えた。



けして綺麗とは言えないアパートで一緒に住んでいた。


拓哉は昼間は職人をしていて、夜中の2時を過ぎた頃になると家を出ていき新聞配達をしていた。


あたしは朝から夕方までスタンドでバイトをしていて、終わったら夕飯の買い物。そして、拓哉が少し睡眠をとっている時は傍にいて寝顔を見つめていたり。


休みの日は毎回、二人合わせてとって、色んなデートを楽しんだ。



「柚木のためならなんでもするんだ」


凄く優しい拓哉は真っ直ぐな人で……

優しくて……

少しだけ、やきもち屋さんで……


あたしは、そんな拓哉を心から愛していた。




生活も大変だったけど節約して1年後に結婚するために必死にお金を貯めていた。

そんな矢先……

彼はいなくなった。



新聞配達が終われば、そのまま原付きで現場に向かう。だから、あたし達が次に逢えるのは、拓哉が仕事を終えて帰ってくる時


「今日は、ハンバーグが食べたいな♪」


そんな言葉を残し、新聞配達に行った拓哉は、もう二度とあたし達が住んでいた家に帰ってくることはなかった。



2年の幸せな同棲生活は、拓哉の失踪で終わった。

それはあっけなく、簡単に……。