音楽が流れ始める……

久し振りに聞くその曲は、やっぱり未来から柚木へと一瞬で変えていく。



未来であることを忘れさせてくれる


そして柚木という自分が蘇る……



誰もいない部屋で、唯一聞くこの音楽。


もう、あれから5年も経っているというのに本当に消えないこの胸の痛み……


「拓哉……」


柚木の目の前から突然姿を消した最愛の人


柚木が愛した人間は後にも先にも彼一人だっただろう……


そして彼が残していった、たった一つの忘れものは


このCD1枚だけ……



曲が始まると、小さく口を開け


あたしは静かに歌いだす……