次の日、眠い目を擦り起き上がった。
「もう朝か」
今日でこの街ともお別れか。少し寂しい気がしたけれど僕の中で何か変われるんじゃないかと期待もあった。洗面台に向かい閉じかけの顔を洗った。
しばらく鏡に目を向け自分の顔を見た。
久しぶりに出会う自分の顔、鏡をみる事なんて今までほとんんどなく容姿を気にするなんてなかった僕が今日に限っては長い間僕自身を見たいた。
 いつものジーパンのTシャツに着替え、お気に入りの小石を2つ荷物に入れ帰ってくる事のない部屋にお別れをした。
昼には親戚達がこの家の片付けをしてくれる。思い残すこともない家、けど記憶として忘れられない家。

「さよなら、もお帰ってこないよ」僕は小さく呟いた。
僕はアパートの階段をゆっくりと降りこの家とこの街に別れを告げた。