僕は学校から帰宅すると僕の部屋に閉じこもる。畳しかない部屋には着替えの服と宿題に使う筆箱とノートがあるだけである。
夕方に帰宅して睡魔がくるまでその部屋にただいるだけ。
幼稚園くらいの時からこの部屋にいた気がする。
母は僕を見ると気がっ狂ったように怒ってくる。
鼻血がでるのは当たり前、時には吸っていた煙草を押し付けてきたりもした。
そして、「私が家にいるときはこの部屋からでるんじゃないよ!!」と閉じ込められる。
難儀なのは父親だった。
仕事から帰ってくるなり僕はサンドバックのように殴られる。
痛みなのか恐怖なのかわからないが口からは大量の胃液があふれ出てくるときもあった。
触らぬ神に祟りなし。そう行動するようになった。
だから僕は『僕の部屋』から出なくなった。
学校の友達は休み時間になるとゲームの話で盛り上がっているがもちろんその輪の中には入れてもらえない。こんな生活をしていると友達なんてできるはずもなかった。
僕の部屋での唯一の遊びは下校途中に拾った小石を眺めていること。
とても綺麗で1日の中で一番幸せに感じる時なのかもしれない。
夕食は両親が寝静まったときにこっそりと冷蔵庫の中の物を拝借していた。
母は気づいていただろうが見てみぬふりをしていたんだろう。
ただ起きて、学校に行き下校途中に小石を拾い僕の部屋でそれを眺めて夜中に腹ごしらえ。そして就寝。それが僕の1日であった。
今の時代ではよくあることだが十数年前では社会的に受け入れられない時代だった。
慣れると言う事は怖いことで中学に入る頃には恐怖も痛みもあまり感じなくなっていた。
そんな家庭環境の中突然両親は亡くなってもなんの感情もない。
ただ人が死ぬ事は思ってた以上にあっけないだと思った。