青い雲がヤツを思わせる。
まだ、夏は始まったばかりである。

いつか、あいつは言った。

「アンタは、髪、上げてた方がアンタらしいよ。
きっと、すぐ見つけられるように、コレ付けといて。」
そう言って、真っ赤な林檎の髪飾りをくれた。戻って来るはず無いくせに。…

あぁ、そうだ。あの日もまだ、蝉は鳴いていなかった。今年も、あいつを思い出しながら、なつを過ごすんだろうか。

ある日、突然現れたあいつ。
360度、世界を変えてくれた。

まるで、魔法みたいに。

きっと、あいつは魔法使い。
あの、煌めいた夜をあたしは、忘れない。
まだ、
この街に魔法が宿っていた刻の話。