授業が終わって、
廊下をとぼとぼと歩いていると。
「桃山、くん……」
僕は同じクラスの
渡部さんに話しかけられた。
「え、なに?」
「あの…。」
渡部さんはもじもじと
手をこねくり回している。
あぁ、もどかしい。
井原さんのテンポが身体に染み付いている僕は、そんなちょっとの間にも耐えきれない。
「なに?」
「あ、その…。桃山くんと、井原さんて、付き合ってるの…?」
あぁもう…やめてくれよ…。
井原さんの悲しそうな目を
思い出してしまう。
僕はできるだけ冷静に否定した。
「付き合ってなんかないよ…。そもそも僕と井原さんは違い過ぎるもの。付き合うことなんて、これからも無いよ…。」
「ほんと?」
「うん、だって僕に井原さんは似合わないでしょう?」
「それは、そうかな…?私は井原さんと桃山くんのコンビ、すきだよ?」
そう言った途端、渡部さんはあわあわと慌てた様にして、じゃあねと去っていった。
何だあれ…。
僕がはてなを浮かべていると、
「ふーん。そういうことねー。」
聞き覚えのある声が響いた。