「卒業、おめでとうございます!!」

在校生の掛け声と共に、卒業生の私はピンク色のチューリップの花束を抱えて、卒業式の会場である体育館を出た。

「さくらぁああ!」

抱きついてきたのは、同じクラスの菜乃だ。

長いまつげを濡らし、可愛い顔を歪めてボロボロ泣いている。

「うぅ~、もうこの中学ともお別れだね」

「もー、菜乃、そんなに泣いたら可愛い顔、台無しだよ」

笑って言うと、菜乃は不思議そうな顔で私を見上げた。

「さくらはなんで泣いてないのぉお」

「え?」

なんで?と言われても…。

……泣く理由ないし…。

心の中で呟いたけど、ボロ泣きしている菜乃の前では言えなかった。

代わりに、笑顔で言う。