「………それだけ?」


冷たい声が響いた。


「そ、それだけって、」

「明らかに逆恨みじゃん」


いけないのは男の方であって、亜理砂ちゃんは関係ない。


呆れてものがいえない。
こんな下らない理由でズタズタにされて、絶望して危うく命を無くしかけた。


「………くだらない。」


あたしは、小さくため息をついた。
あたしに寄りかかる亜理砂の頭を撫でてやる。


「亜理砂、行こう」

「………恵里ちゃん?」

「制服、綺麗にしよう」


腰を上げて亜理砂も立たせる。


「蒼真、亜理砂連れていくから」

「……あぁ」


蒼真が頷いたのを確認してから、あたしは亜理砂の手を引いて歩き出す。


「恵里ちゃん、ちょっと待って」


那祁に呼び止められた。