そして、もう一度あたしを見てから、口元を小さく動かし、何もなかったかのようにふらりと行ってしまった。
「………」
「恵里、何か食べたいものとかない?」
「あんまり……」
茉里の背中を見つめながら答え、ハッとお母さんを見ると、眉を下げ悲しそうな表情をしていた。
「あ……久しぶりに、お母さんが作ったポトフが食べたいな」
「今すぐ作るわ!」
パアッと明るくなったお母さんは、バタバタと台所に駆けていく。
その場に取り残されたあたし達三人。
「取りあえず、リビングに行くか」
「……そうね」
玄関に何時までもいるわけにはいかないし。
蒼馬が先に、そしてあたし、那祁の順にリビングに向かう、
「恵里ちゃん」