「恵里の側に置いとくべきじゃない」
腰を上げて妹を立たせる。
そして、那祁に渡した。
「二度と俺の前にも恵里の前にも顔を見せさせるな」
「………蒼馬」
「後はお前に任せる」
那祁は、妹を見下ろした後、ため息をついて分かったと頷いた。
「何してもいいんだね?」
「あぁ」
「たく……」
やれやれと那祁は妹を連れて歩き出す。
これでもう妹の顔を見ずにすむかと思うと嬉しくなる。
きっと、これで恵里も楽になる。
そう思った刹那、ガタンと物音が響いた。反射的に目を向けると、今ここにいないはずの人物がいた。
「………恵里…?」
ドアに寄りかかりながら必死に立っていようとしている恵里の姿だった。
制服出もなく、寝巻きに上着を着た格好だった。