まるで、俺のためみたいな言い方だ。
俺は、一つも望んでいない。
むしろ迷惑だ。
「精神的苦痛を与えても微動だにしなかったし」
「………精神的苦痛、だと?」
耳を疑う。
この女、今何て言った?
様子が変わった俺に気づかず妹はペラペラと喋り出す。
「ちょーとイタズラ頼んだだけよ?」
でも、無視ばっかしてさぁ。つまんなくて。
妹は、襟元についているバッチを取って見せた。
それにはちゃんと恵里の名前が彫られている。
「どうやって、手に入れたと思う?」
「………」
「奪ってもらったんだ」
まるで、ずっと欲しかったおもちゃが手に入ったようにバッチを見つめている。
「大変だったー」
妹は、バッチをつけ直した。