「携帯はどうした?」

「忘れちゃった」


恵里の妹の横を通り、ベッドに腰かける。ギシギシとスプリングが鳴る。


「熱は下がったのか?」

「何とかね」


俺の隣に座る。
恵里だったら、きっと向かい側のベッドに最初は座ろうとするだろうな。


「教室には?」

「行ってない」


少しずつ、俺との距離を縮めてくる。


俺は無感情にその様子を横目で見ていた。


「ねぇ、蒼馬……」


妹の指先が俺の腕に触れた。


「………なんだ?」

「なんか、今日は冷たくない?」


その指は、なぞるように上がってくる。それに比例して距離も縮まる。


「いつも通りだが」

「本当に……?」


するりと妹の腕が俺の首に回った。