あ、とあたしは、左手でそこを隠す。
大和さんの目が更に細くなる。
「誰にやられた?」
低くなった声は、蒼真との一戦で露になった元暴走族の姿だった。
あたしは、困ったように眉を下げた。
「―――ただの、擦り傷ですよ」
「ガーゼ貼るほど?」
「ええ……ちょっとしたあたしの不注意です」
だから、心配しなくていいですよ。
安心させるように笑えば、逆効果だったのか今度は眉間に皺を寄せてしまう。
「―――蒼真君は?」
「言うほどじゃないです」
すぐ治るんで言わないで下さいね?
心配かけたくないんで。
あたしは、これ以上は自信がなかったから口元に人差し指を持っていった後、また、と蒼真の方に歩き出す。
大和さんは表情が変わらないままあたしを見つめているのが視線で分かる。
それを振りきるようにあたしは真っ直ぐ蒼真の元に向かう。
ズキズキと腕の痛みを堪えながら。