いつもならばそこで蒼真はあたしを宥めにかかる。
しかし、怒りが勝っているからか止まらない。


今ここには那祁も廉もいない。
止められる人がいない今、どうすれはいいのか途方に暮れていると、低い声が響いた。


『―――離せ、餓鬼』

『―――?!』



あたしは、勘違いをしていた。
この日、あたしは鬼を二人見ることになった。


「―――蒼真も大和さんも怖かった……」

「本当?僕もまだ現役かな」

「誉めてませんよ」


苦笑すると、笑顔が返ってきた。
大和さんは、元暴走族だったらしい。
車椅子になってしまったのも喧嘩が原因だったと………てっきり、あたしは自殺でもしたのだと思っていた。


優しい大和さんが喧嘩……とか似合わなかったから。


正直に言えば、大和さんは、似たようなものだよ、と笑っていた。