「恵里!!」
バイクを投げ捨て駆けてくる蒼真は、あたしをその腕に閉じ込めると怒鳴った。
「なにしてんだ!!」
「………っ」
「いきなり飛び出して、電話も出ないで!!」
肩を掴まれて少しだけ隙間ができる。
蒼真は、あたしを見て、額に自分のそれを押し付けて深いため息をついた。
「心配した………」
心底安堵した声だった。
「………ごめんなさい…」
「一体、どうした」
「……」
「あの女に何か言われたか」
すっと蒼真の目が鋭くなる。
あたしは、それには答えないで、真っ直ぐ蒼真を見つめ返した。
『―――言ってみなよ』
今は、ここにいない大和さんが背中を押してくれているようだった。