小さな返事に、ぼくははあ~っと安堵のため息を吐いた。



「…早紀、プロポーズのこと忘れてただろ」


目を細めて早紀を見つめると、彼女は「うっ…」と呟いて目をそらした。



早紀は単純で表情に出やすいから、早紀の考えていることは手にとるように分かる。

そんなぼくでも、今回は緊張のあまりか、早紀の気持ちが読めなくて少し焦った。




プロポーズされたことを瞬時に忘れる人って…存在するんだな。と、(ある意味)感心。






ソファの下で二人肩を並べて、注ぎ直したミルクティーを飲んでいると、早紀は顔を真っ赤に染めてぼくを見つめた。


体をこちらに向けて改まっている。




「あの…」
「ん?」


(可愛いなあ)


今すぐにでも早紀をどうにかしてしまいたい気持ちを抑えて、早紀の言葉に耳を傾ける。





「ふつつかものですが…よろしくお願いします」




ぺこり、とぼくにお辞儀をした早紀。


(ほんと、可愛い)



ぼくも早紀に体を向けて頭を下げた。



「こちらこそ、お願いします」