「むぅ……お母さーん! タク兄が意地悪する!」


「なっ!?」


こいつ、強硬手段に出やがった!


兄と弟という立場上、母さんが仲裁に入れば必然的に兄の俺が不利になる。


それがいかなる理由であろうと、例え朝飛の方に非があったとしても、俺が全て悪いことになってしまうのだ。


しかも母さんは朝飛にあまい。


末っ子ということもあるだろうけど、三年近くも離れて暮らしていたのだ。甘やかしてしまうのも仕方のないことだろう。


「なにー?」と母さんが台所から声をかける。


朝飛が再び助けを求めようと口を開きかけたので、急いで塞いで「なんでもない」と台所に向かって叫んだ。


「はぁ……わかったよ。振り付け考えてやるから文句言うなよ?」


「やたっー! フィーロみたいにカッコ良くて、だけどちょっぴり危険な香りがするプロにしてね!」