その日を境に練習メニューが大幅に変更された。
まずは新しいブレードに慣れなくては始まらない。
本来ならプログラムが出来始める時期だけど、プログラム作りは一旦さて置き、徹底的にコンパルソリーを滑ることになった。
コンパルソリーは旧採点方式時代に行われていた種目の一つ。
規定とも呼ばれていて、氷上を滑走して課題の図形を描き、姿勢と滑り跡の図形の正確さを競うのだ。
フィギュアは元々氷上に美しい図形を描く競技。このコンパルソリーこそがフィギュアスケートの起源である。
今は完全に廃止されたけど、美しい図形を描くということは美しいスケーティングと巧みなエッジワークが求められる。
競技で廃止されたとはいえ、現役選手でコンパルソリーを軽視している選手は誰もいないだろう。
新しいブレードも届き、現役時代は高いスケーティングスキルに定評があった大塚さんと一緒に図形を描く。
現役を離れるとどうしても技術が劣化してしまうものだが、スケーティングは別格だ。