「……いや、なんでもない(平成生まれのくせに脳みそは昭和なのかこいつ)」
「そ、そうよね。一途な恋って素敵よね!(ピュアってレベルじゃねーぞ)」
「そうそう。赤い糸で結ばれた真実の愛が一番だ(残念なイケメンだなぁ)」
なんだか取ってつけたような言葉が贈られる。
まあいいや。今は恋愛話をする時ではない。
このプログラムをどうするかだ。
なんとか本題に戻って、俺がシェヘラザードを滑れるかどうかという議題になった。
問題は俺とは似ても似つかない王様を演じきれるかどうか。
有名で人気のある楽曲だから、ジャッジもこのストーリーを概ね把握しているだろうから誤魔化しは通用しない。
しかもSPという短い時間で王様が更生する様まで演じるのは難しい。
せめてFPにコンバートしようか? いやでもFPは別の曲で滑りたいし……。
混沌とした最悪の状況の中、静かな水面に一石を投じたのは有香さんだった。