俺は今、凄まじい布陣に囲まれている。


リンクにある休憩スペース。


一つのテーブルを囲むように座り、新しいプログラムを練っている。


俺の隣には元日本のエースにして世界選手権銅メダリストの大塚アシスタントコーチ。


目の前には元全米チャンピオンにして師弟関係を結んで三年目に突入する本田コーチ。


そして本田コーチの横に座る元世界女王にして世界的な有名振付師の有香さん。


スケーターなら卒倒するような状況である。


この状況に慣れてしまった俺は「我ながら凄まじい精神力だなぁ」と内心呟きながら、本田コーチの言葉に耳を傾けていた。


「今年は五輪シーズンだ。他の選手も一層気合いを入れて挑んでくる。選曲から緻密に作戦を練らなくては、タクが表彰台に上がるには難しいだろう」


今までは俺とコーチの二人が話し合って曲を決めていたけど、わざわざ振付師の有香さんまで呼んだんだ。


今年はいつになく真剣で本気だ。五輪シーズンだから仕方のないことだけど。