ジャンプとステップに全力を注ぎ、苦手なスピンはラストに持ってきて余力で乗り切る。そういった戦術だろう。


あちらの戦術は見事大成功なのだろうが、唯一の欠点が得点でも浮き彫りになっている。


演技構成点の低さ。


無論、西野のPCSは低くない。だが、あれだけ高難易度のプログラムを滑ったにしては、低すぎるということだ。


羽生の演技構成点が81点。朝飛の演技構成点が72点。そして西野は77点。


三者の得点の差は“繋ぎ”と“表現力”だろう。


朝飛と西野は複数の大技を組み込みこんだせいで、要素と要素の繋ぎを省かざるを得なかった。


表現の面も、朝飛はジュニアということもあってか弱い。確実にエレメンツをこなそうとして、表現するというところまで気が回っていなかった。


それは西野にも言える。


ステップでの表現は実に素晴らしかったが、スローパートが駄目だった。ジャンプと繋ぎの要素に気を取られて、ステップ時の上半身の動きと落差があった。


そういった箇所で、羽生と差がついたのだろう。