ジャンプは完全に戻った。今では苦手としているアクセルすら、自信を持って挑めるくらい完成度も上がっている。


だが、今大会は新FP初披露の舞台。しかも五輪の最終選考会。


演技の流れの中で四回転を跳ぶのはまだ難しい。


大介とは僅差。ノーミスで滑り切れば、逆転優勝も夢ではない。


仮に優勝こそ逃しても、現在三位以下とはかなりの差がある。


三位を大きく引き離し、大差で二位になれば代表に選ばれる可能性もあるとコーチは言う。


もちろん本田コーチは、羽生さんや朝飛のことを過小評価しているわけじゃない。


逆転優勝できるだけの実力を持つ強敵だからこそ、SPの貯金を生かすためにノーミスの演技を勧めている。


本田コーチの言うことは理解できる。代表権を獲得するためには、安全策を取るのが正解だろう。


だけど俺は、首を横に振った。


大きな溜息をついて、あからさまに呆れた顔をするコーチ。