結論から言うと、母さんはただの盲腸だった。


俺が病院に着いた頃には緊急手術が行われていて、看護師さんから盲腸の手術をしていると教えてもらった。


てっきり生死をさ迷う重病だと勘違いしていた俺は、ほんの少しだけど安堵した。


だが術後にお医者様から聞いた話では、あと数分遅かったら盲腸が破裂していて、命に関わる危険な状態だったらしい。


朝飛の電話の後、俺がすぐに119番に連絡したから助かった。そう聞かされた時は心臓が止まるかと思った。


あの時、朝飛が俺に電話をしなかったら。あの時、俺も動揺して判断が遅れてしまったら。


そう考えたら背筋に冷たいものが伝い、体温が一気に冷え込んだ。


それでも病室のベッドで寝息を立てている姿を見て、凍りついた身体も少しだけ溶けていった。


麻酔で眠っているため、暫くは起きないらしい。


このまま母さんと朝飛を放って中国に行けるわけもなく、コーチも家の事情を知っていたので、一旦中国入りは白紙にしてもらった。


今はただ、母さんの目が覚めることだけを考えていればいい―――