「選考レース。現状では俺とチビ助が有利だけど、今回の優勝で何が起こるかわからなくなった。弟君のポテンシャルも、チビ助の方がわかってるだろう?」
黙る大介。
俺から言わせればこいつも泣き虫なお子様だが、スケーターとしては一流だ。選手を見る目は十分ある。
五輪の枠は二つ。事実上の代表候補は四人。
覚醒した世界四位に、失う物などないジュニア選手。
下馬評では俺と大介が有利と言われているが、いつその評価が引っくり返るかわからない。
無論、俺も二番手に甘んじる気など毛頭ない。
「“無冠の王者”が勝者になるか敗者になるか。下剋上が起きないように気をつけるんだね~」
「……その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。全日本チャンピオン様」
女子シングルの表彰式が始まる。
戦いの幕開けは、静かに幕を開いたのだった。