少し同情しながらも、野田さんは一笑に付してこう答えた。
「あら、特ダネなら私も持ってるのよ。アンタが取材と偽って、会社の金を横領してるってネタをね」
「な、なにを馬鹿なこと言って……!」
「アケミちゃんだっけぇ? 随分貢いでるみたいじゃない。私も欲しいなぁ、ロレックスの腕時計」
「この……覚えてやがれ!」
そう吐き捨てて、男はボロボロになったカメラを拾い走って行った。
なにがどうしてこうなったのか、全く状況が掴めない私。
ただ一つ理解出来たのは、野田さんが意外にも外道だったということだ。
良い子は絶対真似しちゃ駄目だぞ。普通ならブタ箱行き決定だから。
「あの、ありがとうございます?」
とにかくピンチを救ってくれたことに変わりはないわけで、感謝の気持ちを述べてみる。
「なんで疑問形なの? 全く、試合前にイチャイチャしてるから、あんな男にすっぱ抜かれるのよ」