「ふーん。ちょっとはあったんだ?」


君の言う「ちょっと」とは、一体どれだけの割合を占めているのだろうね? お兄さん凄く気になる。


「実の姉のように慕っていたミューちゃん。一人のスケーターとして尊敬していたミューちゃん。だけど本当は、一人の女として恋愛感情を抱いていた。っていうわけね」


「うぅ……」


「図星? 図星だよなあ? じゃなきゃ憧れの人物を、姉のような存在を、押し倒して、愛の言葉を囁いて、あまつさえキスしようとはしないもんなあ?」


「ぐぅ……」


あ、ヤバイ。


―――ちょっと楽しくなってきた。


「離れてみて初めて自分の気持ちに気付いたってやつ? ふと気付いたらミューちゃんのことばかり考えていて。ネットでミューちゃんのあらゆる情報をかき集めていて。試合の映像は高画質録画でブルーレイに永久保存。年々磨かれていく技術と表現力に感動を覚え。年々大人の女へと変貌していく様に頬を染め。
『嗚呼、俺は美優姉のことが好きなのかもしれない。スケーターとしてじゃなく、姉としてじゃなく、一人の女性として美優姉のことが大好きなんだ』
てな感じで気づいたものの、日本とロンドン。まして自分はミューちゃんからしたらタダの弟的存在。一人の男して見てくれるわけがない。
それでも諦めきれなくて、いつもミューちゃんと一緒にいる兄に嫉妬して、毎日毎日涙で枕を濡らしていたら、舞い込んできたのがバンクーバー五輪。