朝ちゃんは怒ってるんじゃない。


いや、怒ってるんだけど。でも実はそんなに怒っているわけじゃなくて。


「少しは俺だけを見てよ!」


悲しいんだ。


悲しくて悲しくて、だけどそれを悟られたくなくて、怒りで悲しみを包みこんで……。


泣きたいのを我慢してるんだ。


「この場にいない人の話なんか聞きたくない!」


ポタポタと、頬に冷たいなにかが落ちてくる。


その正体はすぐにわかった。


だって朝ちゃんの瞳、目頭にたっぷり雫を貯め込んでいるんだもの。


でもゴメン。ゴメン朝ちゃん。


私バカだから、朝ちゃんがどうしてそんなに悲しんでいるのかはわからないの。