とにかく怒っている原因を見つけて謝ろう。
朝ちゃんがこんなに怒っているのだ。無意識の内に私が朝ちゃんを傷つけたんだ。
真っ先に思い浮かんだ『ドライヤー不快説』を口にしたが、朝ちゃんは黙って首を左右に振った。
「……タク兄の話ばっかり」
真上から落とされた言葉は、理解するのに数秒かかった。
「いつもそう。二言目にはタクちゃんタクちゃんって、美優姉はタク兄のことばかり。俺のことなんてちゃんと見てない」
「えっ……と、ちょっ、え?」
「折角二人っきりになったのに、ドライヤーブンブンされて気持ちよかったのに、話題はこの場にいないタク兄のことばっか」
あ、ドライヤーは気持ちよかったんだ。
ちょっとだけ安心。
だけど朝ちゃんの瞳が潤んでいるのを見つけてしまい、その安心も一瞬にしてどこかに吹き飛んでしまった。