「ジャンプ対決をしよう!」


アイススケートショーの練習中に、突然美優が提案してきた。


地元で行われるこのアイスショーは、長い歴史を持つ世界的にも有名なショーで、国内外のトップ選手が招待されている。


地元開催ということもあり、ジュニアの時から俺と美優は何度か参加させてもらっている思い出深いショーなので、今回の招待も快く引き受けた。


全体練習も終えて後は個々の自主練習になったのだが、突然の美優の提案に俺はちょっと困惑した。


今回披露するプログラムの練習をしたいという理由もあるけど、一番の理由は……。


「俺はいいや」


美優に勝てそうもないからだ。


一つ年下の幼馴染である美優は、ノービス(ジュニア以下の階級)の頃から『天才少女』と呼ばれスケート関係者から注目されていた。


そしてその注目に恥じぬ成績を美優は出し続けている。


世界選手権異例の三連覇。シニアの国際大会全戦全勝。歴代最高得点の更新。