「名前、聞いてもいいですか?」

「ぁ…はい!!!!!
 えっと、雪村宇未です!!」

「雪村さんですね!!ありがとうございます」

「い、いえ……それでは…」

そう言ってあたしはそそくさと
彼から離れて行った。

彼のことが苦手だからとかじゃない。


ただ…

ただ、彼の容姿に
見とれてしまいそうだったから。
 




「桜も舞、僕たちの胸は期待で
 膨らみ……」

今、入学式の終盤。

そして、すぐるの挨拶。

いつも、うるさいと思っていた
すぐるの声が何故か綺麗に聞こえた。

「新入生代表 中嶌すぐる」

パチパチパチ…

「ねぇ、あの中嶌すぐるって子
 かっこいいよね?」

「あっ!!あたしも好きかも~♪」

あたしの目の前にいる女の子たち。

(え? すぐるがカッコイイ???)

やっぱり、幼馴染でいると
全然気が付かないらしい。

あたしはうるさい幼馴染と
思っているが、他の子たちからは
すぐるはカッコイイらしい。

(まあ、確かに顔は綺麗だと
 思うけど…)

でも、やっぱりわからない。

恋愛対象外?

みたいなカンジだし。

「あ、あと2組にいた子も
 かっこ良かったくない?」

「ああ!!!! 校長の孫なのに
 全然顔が似てないって噂されてた
 男子でしょー?

 なんか、本物の王子様
 みたいだったよね~♪
 それに容姿端麗で成績優秀らしいし!
 今年の最高得点者だったみたいだよ?」