そう、彼の首に巻かれた
昔の恋人の形見。
 
あの日、セリナさんがその
ネックレスを引きちぎり
工房へ向かって投げた後の
彼の悲哀に満ちた表情を私は
ずっと忘れる事ができない。

彼女との別れがイサオさんに
深い悲しみを与え、傷となり

今も傷跡は、くっきりと
彼の心に残り続けている。
 
あの時、抱きしめたイサオさん
の体温から伝わってきたのは

彼の心の空しさと
 
とてつもない寂しさ。
 
そこから感じとれた事、それは
・・・
 
きっと、彼の愛しい人はもう

この世にはいない・・・
  
私を見つめる彼に、何も
答える事ができない。
 
何をどう伝えればいいのか
冗談で流せるような話でもない