奈津は自分のノートを開いて丁寧に教えてくれる。

奈津の説明は完璧だ。

そして、ノートも完璧。



「……ありがと。
あのさ、私、ちょっと黒板写しきれなかったところあって。
ノート、写させてもらっていいかな?」

「うん、どうぞどうぞ」

「ごめんね、すぐ返すから!」



私は自分の席にクルリと向き直り、奈津のノートを写しながら悟った。



先生が速いんじゃない。

奈津も、他のみんなも、あのスピードについていけてる。

授業についていけなかったのは、私だけなんだ。


……つまり、私とみんなとでは、レベルが違うんだ!



芦川聡美(アシカワサトミ)、15歳。

高1の授業1時間目にして、『挫折』という言葉の意味を知りました……。