「……芦川のクラス、数学は担当誰だ?」 「えっ、数学? 成瀬先生ですけど?」 話が急に変わって戸惑いつつも塾の先生の名を答えると、先輩は首を振った。 「いや、塾じゃなくて、高校」 「ああ、増田先生です」 でも、なんで急に数学の先生の話? 「増田……って誰だっけ?」 「えっとー、40歳くらいで、ちょっと太った先生です」 先輩の質問の意図が読めずに首をひねりながらも私は答えた。