不思議に思いながら先輩を見ていると、先輩は続けた。
「聡美のおかげで決心がついた。
実は前から、この人の元で研究したい、って思ってた慶応の教授がいるんだ。
でも、あの人に東大東大って刷り込まれて、当然のように東大志望にしてた。
だけど、俺が行きたいのは東大じゃない。
俺は自分の行きたい道を進むよ。
気づかせてくれて、サンキュ」
「いえ、私は何も……」
すると、先輩はポンと私の肩に手を置いた。
「ほら、終点だ、降りるぞ!」
「えっ、あ、ホントだ。
ちょっと先輩、待って下さい!」
窓の外を見て、終点の駅に着いたのを確認し、慌てて先輩を追って電車を降りた。