駅に着いたところで、私はふと北見先輩のお兄さんのことを思い出した。


「あ、そういえば、このあいだお兄さんをお見かけしましたよ、映画館で」

「映画館?」

「ええ、お兄さん、デートだったみたいです。
お兄さんの彼女、ご存知ですか?」

「ああ」

「すごく可愛らしい人ですね」

「兄貴と話したのか?」

「いえ、見かけただけです。
それに邪魔しちゃ悪いと思ったし」

「ふうん」

「すごく仲良さそうでした。
お兄さんも彼女さんも素敵ですね」


私は、二人の仲睦まじかった様子を思い出し、自然と笑みを浮かべた。