俺は、のあとに、なにもセットになる言葉がないのだと気がついた。

だってそれまで、必ずそれはついてきたから。


寒くて、雪が降って、俺が手をこすりあわせて。アカリが、寒いねぇって、俺の手を片方取って、俺のポケットの中につっこんで。

暖房が効くまで寄り添って。

暖房が効いて、部屋が温かくなってからも寄り添って。

なんだか暑いねって、冬なのにねって、笑って、笑って、


俺が、アカリが、アカリは……俺は。



「…………っ、」



真っ暗な部屋に帰ったら、涙が溢れた。

男が泣くなんて、とかそれ以前に、人間じゃなくなるみたいに溶け出すように泣いた。


ああ、そうか。


アカリは、死んだんだ。

もう二度と会うことはできないんだ。


会うことも、話すことも、笑いあうことも、すねてみせることも、髪に手を伸ばすことも、触れることも、触れた瞬間に心臓が揺れることも、ぎゅうと、抱きしめた瞬間に体温を感じることも、全部。


全部、もう。