最初は気が重たかったけど、
想像していた大地君とは別人で、
話しやすい人でよかった。
そうあたしは心の中で一安心した。
「はいっんじゃこれ手伝って。
俺かえっちの分まで頑張ってたんだから」
そう言って大地君は半分いじけて、
あたしに数十枚のプリントとホッチキスを差し出した。
あたしはそれを
「ごめんごめん」と笑って受け取り仕事を始めた。
「大地君の“大地”って苗字だったんだね。
あたし“大地”って下の名前かと思ってたよ」
「それよく言われる。
しかもかえっち。“だいち”じゃなくて“たいち”だし(笑)
名前は瞬矢なのにね。ややこしい苗字だよ」
「嘘っ!!!ごっごめん!てっきり大地(だいち)君かと…」
焦るあたしに「いいっていいって」と笑う大地君。
二人っきりの教室で尽きることなく会話する二人。
きっと他の人が見たらカップルと間違えられるだろう。
気付けばあたしはほんの少しだけ
三笠先輩のことが頭から離れていた。
「瞬く…瞬く…まーくん!!!」
あたしがこう叫んだときには
もうとっくに学習委員の仕事も終わり、
外も暗くなり始めていた。
「そんなん呼ばれたことないんすけど(笑)」
あれから話はどんどんリンクしていって
今は大地君のニックネームを決めている。
大地君はほんとおもしろい人で
気も合うし、
やっぱ人は第一印象で決めちゃダメだなって実感(笑)
「いーじゃん!あたしだってかえっち初呼ばれだし!
だからまーくんで決定ねーっ!!」
あたしはそう言って
意地悪そうに舌を出した。
“まーくん”は仕方ないなぁと言わんばかりの顔であたしに微笑んだ。