「うわぁん・・・広すぎだよぉ・・・愛夢どこぉ??」


お金持ち高校の桜ケ丘高校の校舎は
公立高校とは思えないくらい綺麗で豪華で広大で
地元のオンボロ中学校から来ていたあたしは
まさかの校舎で迷子になるという大きな失態をおかしてしまった。

周りを見ても知らない人ばっかだし
こんなことになるなら
受けもしない高校のオープンキャンパスなんかこなければよかったとひどく後悔した。


「も帰ろうかな・・・」

なんだか人通りも少なくなってきたし、
だんだん疲れてきたあたしは帰ることを決意した。
一緒に来ていた愛夢に心のなかでさよならをし昇降口を探した。

その時だった。

ポンポンっと軽く肩を叩かれた。
あたしの体が反射的に振り返る。

振り向いた先にいたのが三笠先輩だった。


「もしかして迷っちゃった?」


頬にえくぼを作り、
あたしを覗き込む先輩。


「えっ・・・あっあのっ・・・」


あたしは校舎で迷子になったことが恥ずかしく、
必死でそのことを隠そうとした。
多分顔は真っ赤だったと思う。

真っ赤なあたしに先輩は
にこっと目を細めあたしの頭を軽くなでた。

いきなりの行動にあたしの顔は茹でダコ状態。


「ついておいで。体育館まで連れて行ってあげる」


先輩はそう言い、長い廊下をまっすぐ歩き始めた。

これからのことはあまり記憶にない。

ただ先輩が最後にくれた

「どういたしまして♪」

の笑顔が
頭にこびりついて離れなかった。