彼に出会ったのは夏の終わり。
白いボタンダウンのシャツに紺色のストライプのスーツを着た彼の姿を昨日のことの様に覚えている。

私よりは少し年上の様に感じた。
『仕事はできるんだろうなぁ。』
そう思わせる雰囲気だった。
喫煙スペースで先輩達に囲まれながらタバコを吸う彼。
その中では歳は一番若いだろうと思われた。
皆から話しかけられ、笑顔の絶えないそのスペースは周りとは異なった色をしている様に見えた。
きっと、先輩達から慕われているんだろうな、と思わせる空間だった。

自分に自信もない。人見知りも激しい。
その上、まだまだ仕事の出来ない私は、彼の視界へ入ることさえ出来なかっただろう。
その時は話しかける勇気もなく過ぎていってしまった。
けれど、彼の整った顔立ちとさわやかな笑顔は私の目を釘付けにした。