「!?夏…?」

動揺する『沙希』に構わず、俺は腕に力を込めた。


「ふざけんな。」

馬鹿だろ、お前


「お前が『沙希』だろうが姫だろうが、んなの関係ねーっつーの。

俺がここで出会ったのは、馬鹿みたいにはしゃいで、馬鹿みたいに運が強くて、後先考えずに喧嘩売りに行く…そんな奴だ。

姫だろうと、お前はお前だろ?」


俺は『沙希』を振り向かせた。

潤った瞳と、目が合う。


「それに、ずっと憧れの外だったんだろ?病気のことなんて俺にはさっぱり分かんねーけど…残りの人生、一人で生きていく気かよ?」