俺の否定に『沙希』は首を振った。

「分かるんだ。この病気に治療法は無い。だから私はいつかこの世から居なくなる。」

それだけ言うと、『沙希』は俺に背を向けた。


「だから夏とはさよならなの。たった数回だったけど、夏と会えて良かった。

…だから、もう家に帰りなよ。」


『沙希』の言葉を聞いて、俺は溜め息を吐いた。


『沙希』の肩は小刻みに震えている。


言葉ではああ言ってるけど、本当はーー



気がつくと、俺は『沙希』を抱きしめていた。