それから俺もちょこちょこ遊ぶようになり名前もラルス、と呼び捨てになった。
ただ村の様子が最近おかしい…
兄ちゃんも最近笑っている顔が減った。
ある日こんな話を聞いてしまった――――
「人魚は…ラルスは危険なんかじゃない!」
「いや…危険だ。人魚はあいつだけだ。殺すなら今だろう。」
―――――――何を言っているんだ?
兄ちゃんがラルスに会いに行き俺は家の手伝いがあって、後から洞窟に向かった。
だがすでに手遅れだったのだ…。
洞窟の中で響く声が聞こえる…
最初は、お兄ちゃんとラルスかなと思ったけど違った。
「邪魔だ!人魚は不吉だ!!今殺さなきゃ昔と同じ過ちをしかねない!!」
「そんなことラルスだけじゃ無理だ!人魚はこの世でラルス一人だけなんだぞ!!」
そんな時海の中からヒョコッとラルスが顔を出した。
「…っ!人魚だ!!」
「ラルスっ!逃げろ!!」
ラルスは話が読めずとにかく海へ逃げなければと思い背をむけた時…
「邪魔だ、どけ!!」
――――――――ドスっ!!!
『ロイっ!!!!』
兄ちゃんはラルスを見て微笑んだ。
「ラルス、愛してる。」
「私も…愛してる!』
ラルスはハラハラと涙の雨をつくり兄ちゃんはラルスに口づけをした。
そして海へとラルスを突き飛ばした――――――――――
★‐‐‐‐‐‐‐‐--‐★
「思い出した?マオだよ。」
ラルスはまだ驚いている。
『マオ…マオだったのね?!全然分からなかった』
「そら人間だし成長するからね」
『じゃあ何で最初から言ってくれなかったの?』
凄く疑問に思ったことだった。
「最初人間を嫌ってる様子だったからいきなりマオって言っても信じてもらえないと思ってさ…」
『そうね…。』
「ラルス、良かったら一緒に住まない?一人だと心配なんだ。」
『……分かった。考えてみる』
本当は考えるつもりなんてなかった。
「じゃあ明日ね来るからその時に」
そう言ってマオは洞窟から出ていった。
この洞窟に戻ってきたのは、
ロイの故郷で私達が出会った場所だから…
だから、マオと暮らす事はできない。
まず人魚と人間じゃ一部じゃなきゃ認めてくれないわ。
結局の所分かり合えないのよ…
二度とこんな事が悲劇が起きないようにただ、ただ、私は願うわ。
「ラルスー?」
マオはラルスの返事を聞きに次の日また、洞窟にやってきた。
そして手紙が置いてあった。
†------------†
手紙、読んでるかな?
ごめんね。勝手に居なくなって…
私がここに居たらまたロイのように、誰か犠牲者が出てしまう…
そう考えると恐いの。
いつか人魚と人間が分かり合える日が来れば、と思っていたけれど、ダメだった。
世の中そんなに甘くないわよね。
だからこれ以上マオにも迷惑掛けたくないから、誰も居ないところを探して静かに暮らします。
どうせなら陸も海も差別のないとこに生まれたかったなぁ…
――いつか分かり合える日が訪れますように――
私はここからただ、ただ、それだけを願います。
マオ
ありがとう。
「なんで、なんで人魚と人間じゃダメなんだよっ!!」
洞窟の中にマオの悲痛な叫び声が響いた―――――――
その時魚が顔を出した。
そしてその魚は泳いで綺麗な珊瑚礁のところに向かった。
「ラルスっ!あの男の子すごい悲しそうだったよ。」
『そう…わざわざ様子見に行ってくれてありがとね。』
「戻っても、いいんだよ?」
『いいの。私は海でこれからも生きるって決めたから…』
私は人魚。
自由な人魚。
そう…私はこれから海の世界で生きていく。
生き残っている海の生き物たちを集め、また一からやり直す。
――人魚と人間が分かり合える日を夢みて――