う、うるさい!!、なんて言いながら直樹を速足で通りすぎる。


クスクスと笑う直樹の声が後ろから聞こえた。


でも。


「…星蘭、可愛い」


なんて呟いた言葉は、私の耳には届いていない。


そんなことをしているうちに、ドアの目の前に。


ドアを開けると、綺麗で大きな部屋が広がっていた。


「―…っ」


お金持ちの家のイメージ通り。


広くて綺麗でシャンデリアがあって。


執事みたいな人もいた。


家の中を一歩一歩、歩くたびに言葉を失う。


そのまま直樹についていき、2階にある直樹の部屋へ。


2階には5つの部屋があるように見えた。


「どうぞ、入って」


「うわ―…ってか広っ!!」


黒基調の部屋。


なんともインテリな感じの部屋で。


「適当に座って」


そういいながら、直樹はベッドの上に座る。


「は、はい…」


ちょっと落ち着くのに時間がかかりそう。


私は、黒く丸い机のある部屋のど真ん中に腰を静かにおろした。


緊張しすぎたせいなのか、なぜか正座。