「じゃあさ…」


政也は、私の横にいる直樹に目線を変えた。


お、俺?、みたいな顔。


「神谷って星蘭がキスできないってわかって付き合ってるんだ」


ニヤリと奇しく笑う。


まるで、なにかに勝ち誇ったかのように。


「なっ…」


私と直樹は、顔を見合わせる。


キス恐怖症を知ってるのは、私と直樹と政也と―…。


…あっ!!


私は、そのまま直樹とは逆の方向に、ゆっくりと向いた。


「え…星蘭が…キスでき…ない…?」


放心中の莉子がいた。


頭の中が、混乱しているのがよくわかる。


私も直樹も。


政也が、そんな状態の莉子を見た。


「あれ…莉子ちゃん、知らなかった感じ…」


余裕の顔が、少しひきつるのが見てとれた。