「結局、俺にしがみついてんじゃん」


その言葉で我にかえると。


確かに、私は直樹にしっかりと抱き着いていた。


「なっ…」


私は走行中のなか、慌てて手を離す。


が、危なくてまた直樹にしがみつく形。


「だから、しがみついとけっつっただろーが」


このとき、直樹はどんな顔をしていたんだろーなって。


考えている自分には気付かない。


でも、確実に今の手を離すことはない。


体がそう感じてる。


少し涼しめの風と、直樹の背中の温もりが合わさって、もっと心地好い。


こうやって、最後に男の人に抱き着いたのって、いつだろう。


記憶にない。


今ここに、このままでいたい少しでも願ってしまった自分がいた。


このあと、学校に着くまでは無言のまま。