「…いい加減気付いてくれよ!!」


私は直樹から目が離せなかった。


だって。


――怒った声なのに切ない顔をしていたから。


私は余計に言葉を失った。


ただただ、直樹の顔を。


その切ない顔を見つめるしか―…。


「ごめん…言わない俺が悪いよな」


そんなことない!


って言うところ、言いたいところ。


でも、自分で何も答えてくれないと言った以上。


何も言えないのが事実。


少し表情がやわらかくなる。


「でもな、星蘭。俺は、好きでもないやつとキスなんかしない」


「えっ…」


もしかして私―…。


私の目の前には切ない顔の直樹はもういない。


目の前にいる直樹は。















「俺は星蘭が好きだ。入学した時からな」


にっこりと満面の笑みで溢れていた。


そして。


暗いけれど、ほんの少しだけ赤く染まった頬が見えた気がした。