「私、その相手に安心感をもってないとキスできないみたいなの」


「…でもさ。佐塚とは好き同士で付き合ってたんだろ?」


「もちろん、"大好き"だった。…"引きずる"ほどね」


私の言葉に、少しだけ直樹の眉間にシワが寄った。


その意味を、まだ私は知らない。


「でもなんでだろう。まだ浅はかだったっていうか―…」


言葉が見つからない。


莉子に説明したように説明したらいいだけなのに。


直樹の前になると、言葉につまる。


「幼かったっていうかね!まだ"健全な付き合い"しか想像してなかったっていうか!うん!」


必死に身振り手振りで説明しようとする私。


さっきまで眉間にシワを寄せていたのに、すぐになくなった。


「ははっ、"健全な付き合い"ってなんだよ」


「そ、そこはいいの!!とりあえず、政也とは無理だったのーっ!」


もう投げやり。


でも。


もう今日でこの関係が終わるかもしれないのに。


この雰囲気、なんだか嫌な感じがしない。