"可愛い"だって!


その言葉が頭の中で何度も何度もリピートされる。


余計に恥ずかしくなるわけだが。


でも恥ずかしさより嬉しさが勝つ。


お洒落してよかった。


浴衣を着てきてよかった、そう思う。


相変わらず、直樹は照れたままで目を合わせてくれない。


それなら―…。


私は勢いよく立ち上がった。


「なーおーき!」


「うわっ」


合わせてくれないのなら自分から合わせにいってやる。


顔を近づけるが、また逸らされる。


その繰り返しが何度も続く。


なんだかちょっと直樹に勝った気分。


そのうち。


「わかったわかった!逸らさねーから!」


「わかったならよろしい」


私はえっへんと腕を組んでみせた。


少しは今ので慣れてくれたみたい。


「花火まで時間あるしお祭り楽しも?」


「そうだな」


直樹も立ち上がったと同時に、また自然と手は繋がり。


私たちは屋台へと歩きだした。


「私、綿菓子食べたい」


「女子ってよくあんな甘いもん食べれるよな。あれ砂糖の塊だぜ?」


「えー!!綿菓子食べないとか人生損してる」


「なんでだよ!俺は、焼きそばだな」


なんて話をしながら、屋台の通りを歩いた。


金魚すくいをしたり、射的をしたり。


綿菓子を無理矢理直樹に食べさせたり。


焼きそばを分けてもらったり。


本当の彼氏彼女のように、終始2人の笑顔が絶えることはなかった。